114話 キーボードの亡霊
PCで作業をしていたある時、突然『=』の字が延々と入力されて止まらなくなった。
有線でキーボードをつないでいたので外してみたが止まらない。ソフトを一通り終了しても変わらず。再起動かけてもだめで、ログインパスワード入力欄に無限に=が生成されるためログインできず詰んだ……!と絶望した。
ファイアウォールの設定とかしばらく見てなかったがなんか感染した?
このデスクトップPCももう買ってしばらくにはなるし限界が来た?
キーボードは新しめのはずだがなにか不良が出た?
と色々考えていて、あとはもう試せるところで別のキーボードにしてみるか……と半ば諦めの気持ちで旧キーボードを取り出してきたところ、一目で謎が解明された。
旧キーボードが無線で起動していたのだ。
あ。と思って電源を切ったところ、以降一切発生しなくなった。
旧キーボードは近くの収納に入れていたのだが、どうやら掃除で移動させた折に偶然電源が入ってしまったらしい。無線接続先を3スロットほど設定できる中で最後に使っていたのがデスクトップPCだったのでそのまま接続され、他の荷物に押されて=を連打していたのだろう。
わかってみれば、なんだあ、って感じだし、マルウェア感染とかでなくてほっとした。
ただ後から思い返してみると、新キーボードにとって代わられ、カタカタと軽快な音を聞かされながら荷物の奥深くにしまわれている旧キーボードからしたら、それはなんとも歯がゆい思いをしていたのかもしれないな、とふと思った。だからこそ声(入力)を上げたかったのだろうか。これが記号でなくひらがなだったらと想像すると、ちょっと怖い。
キーボードの亡霊の呼び声。
軽くほこりを払って、押しつぶされない場所に収めた。
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